
The Final 1000 Cellists Concert 2027 in Tokyo
1000人のチェロコンサート Final 2027 in東京
最後の1000チェロ〜世界の分断を絆に変える〜
パブロ・カザルス生誕150年(2026年)
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ 生誕100年
高円宮憲仁親王殿下薨去25年
はじめに
「1000人のチェロコンサート」は、阪神淡路大震災後、第1回の準備を開始した1997年から数えると、まもなく30年を迎えます。これまでに5回開催し、本当に多くの人に助けられ、支えられてきました。出演したチェリストはおよそ3,500人、すべての回に出演された方もいらっしゃいます。また、手伝ってくれた裏方のスタッフは数百人を数えます。
何よりもまず、ともに歩んでくれた人たちに心からの感謝を述べたいと思います。
来年行われる 「1000人のチェロコンサートFinal 2027 in東京」は、最後の1000チェロです。テーマは「世界の分断を絆に変える」。
いま、世界は分断され、戦争が巻き起こっています。まさか、21世紀がこんな戦争の世紀になろうとは思いもしませんでした。
我々、1000人のチェロは、何ができるだろうかと2年、考え続けました。平和を祈ること以外に、です。世界平和を唱えて演奏するだけでは不十分なのではないか。
多くのチェリストが集い、呼吸を合わせ、音を重ねる。このチェリストの中に、紛争当事国のチェリストや音楽家がいてくれたらどうだろう。この演奏そのものが、国境や立場を越えて互いを認め合い許し合い、世界の分断を絆に変えられるという、明確な実践となるのではないか。
すでに、ウクライナ、ロシア、ベネズエラ、イランやアメリカのチェリストたちを含め、さまざまな国のチェリストに声がけをはじめており、このコンサートの意味と価値に賛同してもらっています。演奏は身体を伴った共生の実践です。
このFinalをもって、「1000人のチェロコンサート」という舞台そのものは、一つの区切りを迎えます。しかし、ここで重ねられた音と、国境を越えて結ばれたチェリストたちのつながりは、この一夜で終わるものではないと私たちは考えています。初開催となる東京で世界の安寧を実際につくり出すこと、そして、この絆を次の世代へと手渡していくこと—— それが、30年の歩みを締めくくる、私たちの最後の願いです。
背景、趣旨、そしてカザルス
『この地上のひとりひとりは、平和を渇望している』
パブロ・カザルスの言葉です。
しかし世界は、依然として分断と対立を抱えています。国家、民族、宗教、制度、世代、価値観、それらの境界は、時に人と人との関係を隔てる壁となり、いまなお無辜の民、罪のない子どもたちが苦しんでいます。
壁のこちら側にいれば安心できるのかもしれません。それもまた人情でしょう。しかし、壁の向こう側で起きている現実を、意識の中に留めておくことは、人として必要なことではないでしょうか。
パブロ・カザルスは音楽を通じて平和と人間の尊厳を訴え続けた、行動する芸術家でした。彼は『すべての国境を越えて人類を支配する道徳的原則がある』と語り、『それを侵害することは、すべての善意の人びとの憤激を買わねばならない』と述べています。
カザルスにとって、『音楽への信仰と隣人愛とは分かちがたいもの』であり、『罪のない流血や不正義による犠牲者の涙は、私の音楽やチェロの独奏会全部よりも重要なのだ』と断言しました。
この最後の1000チェロは、まさにこのカザルスの精神を引き継ぐものです。「音楽は単なる芸術表現にとどまらず、人類の平和と尊厳のための力であるべきだ」という彼の信念を現在に蘇らせる試みです。
紛争当事国のチェリストたちが、同じステージに立ち、同じ楽譜を見つめ、同じ指揮者のもとで呼吸を合わせ、同じ音楽を奏でる。その瞬間、彼らは国を背負う存在であることを一度手放し、ともに音楽を創造する仲間となります。この体験こそが言葉を超えた和解と共存の可能性を示すのです。
カザルスが確信したように、『あらゆる偉大な創造の深い源泉は、道徳の力と善意であるべき』。私たちも、そう考えます。
スラヴァ
20世紀が生んだ最高のチェリスト、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ。愛称はスラヴァ。ロシア語で「栄光」という意味です。彼はチェロの名手である前に、自分の人生を自分で引き受け、信じる正義のために声を上げました。その代償として、祖国に国籍を剥奪されました。
1989年、ベルリンの壁が崩れた夜。誰に頼まれたわけでもなく、スポットライトもなければ、拍手を待つ客席もない。彼は、瓦礫の前に椅子を置き、チェロを弾きました。
「1000人のチェロコンサートFinal 2027 in東京」は、スラヴァが一人で引き受けたその行為を、1000人の身体で引き受け直す試みです。
2000年代初頭、スラヴァは第1回1000チェロのCDを聴き、1000人のチェロコンサートの創始者である松本にいきなり電話をかけてきました。これを契機にして第3回はスラヴァの指揮で、1000チェロは開催されることになりました。スラヴァと松本はいわば同志です。スラヴァは天国から、この新しい1000チェロを見守ってくれることでしょう。

2005年5月22日第3回1000人のチェロコンサート。指揮をするM・ロストロポーヴィチ
高円宮憲仁親王殿下とともに
高円宮憲仁親王殿下は、日本の音楽文化、とりわけクラシック音楽の振興に深い関心を寄せられ、国際的な音楽交流の推進にも尽力されました。
第1回、第2回1000人のチェロコンサートでは演奏もされ、さまざまな支援をしていただきました。
殿下の薨去から25年を迎える2027年に、国境を越えた音楽家たちの集いを開催することは、殿下が大切にされた国際文化交流の精神を受け継ぐことでもあります。高円宮殿下が追い求めた理想――音楽を通じた人類の平和と尊厳――を、世界に向けて発信する試みです。
1000人のチェリストが奏でる音楽は、この普遍的な願いを音に変え、分断と対立を超えた人間の絆を可視化します。
カザルスが大切にした『音楽が語りはじめる』その瞬間、1000の魂がひとつになるとき、観客の心にも深い感動と、希望の火が灯されることでしょう。
その場に立ち会うことは、世界を変えていく力を、自らの身体で感じ取る体験となるはずです。そしてそれは、ステージ上のチェリストたちにとっても人間として共鳴し合える、かけがえのない経験となるでしょう。

1998年11月29日 第1回1000人のチェロコンサートでの高円宮殿下
右のコンサートマスターはベルリンフィル首席のO.ボルビッツキー氏
コンサート概要
タイトル
サブタイトル
主催
開催日
開催場所
参加予定人数
特別協力
後援
指揮者
音楽監督
コンサートマスター
各パート首席・準首席奏者
曲目等(予定曲)
1000人のチェロコンサートFinal 2027 in 東京
最後の1000チェロ〜世界の分断を絆に変える〜
パブロ・カザルス生誕150年(2026年)
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ生誕100年
高円宮憲仁親王殿下薨去25年
一般社団法人 国境なきチェリストたち
2027年11月21日(日) 14時開演
京王アリーナTOKYO(調布市)
チェリスト1000名、観客3000名予定
一般財団法人日本チェロ協会
外務省、文化庁、調布市、調布市教育委員会、公益社団法人日本アマチュアオーケストラ連盟
ゲルノト・シュルツ(カラヤン時代のベルリンフィル副指揮者)
田久保裕一(広島・仙台1000人のチェロコンサート指揮者)
ゲルノト・シュルツ
ソンウン ・ホン(韓国 Dankook University 名誉教授)
Apichai Leamthong(THA), Atena Eshtiaghi(IRN), Dmitry Feygin(RUS), Glib Tolmachov(UKR), Joanmary Montes (VEN), JohnMichel(USA), Stephan Haack(DE), Stijn Kuppens(BEL), Sungeun Hong(KR), Tran To Nga(VN)
上村文乃, 菊地知也, 高木慶太, 新倉瞳
鳥の歌 P.カザルス 編曲
セレナーデ F.ラヒナー
リュートのための古風な舞曲とアリア3番 O.レスピーギ
東京からのご挨拶(メドレー) W.ミュラー編曲
白鳥 S.サーンス
讃歌 J.クレンゲル
フラトレス A.ペルト
チェロのためのレクイエム 三枝成彰
弦楽のためのアダージョ S.バーバー
チェリストのみなさまへ(あとがきにかえて)
第1回の企画書、募集要項を書いたときから30年の月日が経とうとしています。1000人のチェロコンサートの創始者松本巧とも長い付き合いになりました。
日本でなら1000人でできると確信し、チェロアンサンブルのビッグコンサートをやってみないかと松本に持ちかけたベルリンフィルのチェリスト、ルドルフ・ヴァインスハイマー(※)は3年前に天国に召され、理事たちの多くも亡くなりました。沖正哉さん、山下伸子さん、岩城雅邦さん、中村幸太郎さん、高橋明さん、ともに1000チェロをつくってきたメンバーです。
2027年はここに記したように、著名なチェリストたちの記念の年ですが、先に逝った仲間たちのことを思い出したい、という思いがあります。
2015年、「1000人のチェロコンサートin仙台」で私は製作全体の統括を務め、燃え尽きたと感じていましたが、このあとにあまりにも多くの紆余曲折があり、分断があった。これは動かぬ事実であり、仙台では終えられないと感じていました。仲違いをして再会できないまま鬼籍に入られたチェリストも多くなり、次に聞くのが訃報というのは受け入れ難い、もう一度みんなに会いたい。
紛争当事国のチェリストに同じ舞台で演奏してもらうという壮大な企画の裏側には、我々自身の分断こそ絆に変えなくてはいけないという大団円的なテーマもあります。
はじめてお会いする方には「会えてよかった」と、そして再びお会いできた方には「また、会えてよかった」と言いたい。それぞれに想いのつまった、いわば巡礼ともいえるような最後の旅に、多くのチェリストの皆さまにご参加いただきたいと思っています。
お待ちしています。
統括プロデューサー
畑井貴晶
企画製作者紹介
松本巧(Matsumoto Takumi)
一般社団法人国境なきチェリストたち 代表理事
1995年、ベルリンフィルのチェリスト、ルドルフ・ヴァインスハイマーと出会い、「1000人のチェロコンサート」の開催を託され、1998年に震災復興を祈念する事業として成功させた。
2001年にNPO国際チェロアンサンブル協会を設立し、2015年までに「1000人のチェロコンサート」は計5回開催されており、チェロの巨大アンサンブルとして一つのクラシックのジャンルと言わしめるほどのものに育て上げた。
現在、神戸市須磨駅前にある神戸牛焼肉店「華」のオーナーシェフを務めるかたわら、日韓の音楽交流などに力を注いでいる。
1950年愛媛県生まれ。
畑井貴晶(Hatai Takaaki)
一般社団法人国境なきチェリストたち 理事
よろずプロデューサー、ブランドコンサルタント、俳人、著述業
1997年、「1000人のチェロコンサート」第1回の企画書と募集要項を書いたときから、この企画に携わっている。松本巧との共著『チェリスト狂想曲〜1000人のチェロコンサートをつくった男』に、どのように関わってきたかは詳しく書かれているが、とてつもないエネルギーを持って活動する松本と対等に渡り合える唯一のパートナーである。
1964年神奈川県生まれ。
※ルドルフ・ヴァインスハイマー(1931〜2023)
ベルリンフィル、カラヤン時代のチェリスト。「1000人のチェロコンサート」の前身となったポツダムでの341人のチェロコンサート(1992)のオーガナイザーであり、日本のアマチュア人口の多さから考えてもっと集まれるだろうと、1000チェロを持ち込んだ張本人。大の日本贔屓だった。